本書は、いかに企業の価値を算定するか、ということについて書かれた本です。
また、価値を創造するための条件やM&Aの注意点、企業の資本構成についても触れられているので、どちらかと言えば投資家より経営者向けの本かもしれません。
本書によると、企業の価値はそれが生み出すキャッシュの量によって決まります。企業が意図的に利益を水増しするような会計処理を行ったり、PERの高いA社がPERの低いB社を買収したとしても、キャッシュの量が変わらない限り企業の価値は変わらないということです。
以下は気になった文章です。
「価値創造の大きさは、究極的にはROIC(投下資産利益率)と売上成長、そしてもちろん、この2つを長期間にわたって維持できる能力によって決まる。(中略)企業が投資家に分配可能なキャッシュフローの額が、単年度におけるROICと成長率にかかっていることを示している。」
「複数の買い手候補が買収対象企業を狙っている場合は、プレミアムは劇的に上昇し、いわゆる「勝者の呪い」という状況が生まれる。(中略)提示額は創造される価値の過大評価に基づくため、落札者(勝者)は価格の払いすぎとなり、結局は敗者ということになる。」
私の投資している企業のなかにも、M&Aを繰り返して売上を伸ばしている企業があります。今のところは成功してキャッシュも年年安定してきているようですが、この点は今後も注視していく必要があるでしょう。
また、企業の決算書を見ていても、それは様々な会計上のテクニックを駆使した結果のものなので、内部の人間でないと完全に読み解くのは無理だと言えます。
しかし少なくとも、企業が安定したキャッシュを生み出しているのかどうか、キャッシュフロー計算書だけはチェックする必要がありそうです。
シーゲル先生の言葉を借りれば、「金をみせてくれ!」ということだと思います。